「パンを移動販売しようと思ったらどんな許可が必要なんだろう?」
「自宅で作ったパンを販売できるものなの?」
「手作りのパンを売るにはどうしたらいいの?」
こんな疑問を持っていませんか?
その気持ちはよく分かります。なぜなら、パン作りにはまっていた時期に私も同じように、これをいろいろな人に食べてもらうために販売できないだろうか?移動販売なら人が集まる場所を選んで出店できるんじゃないだろうか?と考えていた経験があるからです。
自宅で焼いた手作りパンを販売するために保健所に相談に行くほど、真剣に考えていた私がそのときに調べた内容を基に最新の情報も改めて確認した上でまとめました。
この記事では、
- パンを移動販売するための3種類の営業方法
- パンの移動販売に必要な資格・許可・届出
- 自宅などで手作りしたパンを販売するまでの手順
をお伝えします。
法律や保健所が関係することで一見すると難しいと感じることが多い、パンの製造・販売に関係する営業許可についても分かりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
キッチンカーでパンの移動販売をしたい場合は、以下の記事を読んでください。
目次
パンの移動販売の営業方法は3種類に分かれる
パンの移動販売の一つ目の営業方法は「キッチンカーで焼いたパンを販売する」です。キッチンカーの調理スペースにパンを焼くために必要な調理器具(オーブン・ミキサー・ホイロ(発酵器)など)を設置して、出店場所で焼いたパンをその場で提供します。最大の魅力は焼き立てのパンをその場で販売できることです。焼いているときの匂いには集客効果が期待できます。
二つ目の営業方法は「自社のパン工房で焼いて包装したパンを車に乗せて移動販売する」です。この場合は、パンを焼くのは工房になるので、車両はキッチンカーである必要はなく、車両購入費は一つ目の方法よりも安くなります。パン工房に店舗を設けることもできるので、店舗と移動販売の両方で売り上げを上げることが可能です。
三つ目の営業方法は、「仕入れたパンを車に乗せて移動販売する」です。販売するパンは製造を委託する、または市販品を卸売で仕入れます。パンを焼く設備を購入する必要がないので、3種類の営業方法の中で最も初期費用を抑えることが可能です。パンを扱うキッチンカー運営や移動販売については、下記の記事で詳しく解説しています。
» キッチンカー・移動販売パン屋の開業に必要な4種類の資格・許可・届出を徹底解説!
パンの移動販売の許可取得には食品衛生責任者の資格が必要
パンの移動販売に必要な許可は、どのような営業方法をとるかによって種類が異なります。そして、いずれの許可取得にも必須なのが「食品衛生責任者」の資格です。この資格さえあれば、パンの移動販売の営業許可は取得できます。
「食品衛生責任者」の資格は、各都道府県の食品衛生協会が定期的に開催している「食品衛生責任者養成講習会」に参加すれば、即日取得可能です。私自身も飲食業の経験ゼロでしたが、講習会に参加して、講習会終了後には「修了証」をもらって帰りました。
1日の講義で6時間をかけて、「食品衛生学」「公衆衛生学」「食品衛生法」を学びます。講習後に小テストを実施する地域もあるようですが、私が受講したときには小テストは実施されませんでした。受講料は都道府県によって若干の違いがありますが、おおむね1万円前後です。受講料の一例を紹介します(受講料は全て税込み、2024年7月12日時点のものです)。
- 東京都:1万2千円
- 千葉県千葉市:1万円
- 長野県:9千円
- 愛知県:7千円
- 兵庫県尼崎市:7千500円
- 福岡県:1万円
- 沖縄県:8千250円
パンの移動販売に必要な許可・届出は3種類!
パンの移動販売に関係する営業許可2種類(菓子製造業の営業許可・飲食店の営業許可)と営業届出1種類(移動販売の営業届出)について、どのような活動のためにそれぞれの許可・届出が必要かを解説します。さらに、3種類のパンの移動販売の営業方法について、それぞれにどの許可または届出が必要となるかをお伝えします。
1.手作りパンを販売するなら菓子製造業の営業許可
調理する場所が固定のパン工房であろうとキッチンカーであろうと関係なく、自分で手作りしたパンを販売するためには「菓子製造業の営業許可」を取得する必要があります。営業許可はパン工房の設置場所またはキッチンカーの出店場所を管轄する保健所の検査に合格すると取得できます。
検査に合格するために必要な設備などは地域によって異なる場合があるので、まずは地域の保健所に相談することから始めましょう。
2.キッチンカーで調理・販売するなら飲食店の営業許可
メニューに関係なくキッチンカーで調理・販売するためには、「飲食店の営業許可」を取得しなければなりません。営業許可は出店場所を管轄する保健所ごとに取得する必要があるので、出店計画によっては複数の保健所の検査に合格する必要が生じる場合もあります。
キッチンカーではパンを焼かずに、仕入れたパンを使ってサンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグなどを調理・販売する場合は、「飲食店の営業許可」があれば出店可能です。キッチンカーの営業許可取得については、下記の記事で詳細をお伝えしています。
» 【2024年最新版】キッチンカーの営業許可証取得を申請から4ステップで徹底解説!
3.包装されたパンを車で移動販売するなら営業届出
包装済みのパンを車に載せて移動販売する場合には、営業許可は不要ですが、出店場所を管轄する保健所に「移動販売の営業届出」を提出する必要があります。検査などはありませんので、所定の書類一式を提出すれば、手続きは完了です。「食品衛生責任者の資格」を取得していないと届出ができません。
3種類の営業方法ごとに必要な許可を解説
「キッチンカーで焼いたパンを販売する営業」を行うためには、手作りしたパンを販売するために必要な「菓子製造業の営業許可」とキッチンカーを営業するために必要な「飲食店の営業許可」の2種類の営業許可が必要です。それぞれに求められる設備などは異なるので、キッチンカーを購入する前に保健所に出向いて、2種類の営業許可取得に必要な条件を完璧に把握することが求められます。
「自社のパン工房で焼いて包装したパンを車に乗せて移動販売する営業」を行うためには、パンを手作りして販売するために必要な「菓子製造業の営業許可」と包装したパンを車で販売するために必要な「移動販売の営業届出」の二つ(1種類の営業許可と1種類の営業届出)を準備しなければなりません。
「仕入れたパンを車に乗せて移動販売する営業」のためには、「移動販売の営業届出」が必要です。営業届出には検査が不要なので、3種類の営業方法の中では最も簡単に始められます。
自宅などで手作りしたパンを販売する手順を解説
自宅などで手作りしたパンも必要な資格・営業許可を取得すれば、販売することが可能です。具体的にどのような資格・営業許可が必要になるかを解説します。
食品衛生責任者の資格と菓子製造業の営業許可は必須
調理する場所が自宅であるかは関係なく、手作りしたパンを販売するためには「菓子製造業の営業許可」を取得しなければなりません。そして、「菓子製造業の営業許可」を得るための提出書類には「食品衛生責任者」に関する情報を記載する欄があるので、「食品衛生責任者の資格」も必要です。
「菓子製造業の営業許可」の審査に合格するためには、食品衛生法の規定に沿った施設が必要です。ほとんどの場合は、自宅をそのまま使ってこの規定を守ることは難しいので、リフォームなど自宅の改装が必要となります。具体的にどのような規定があるかは、地域の保健所で確認しましょう。
販売方法に応じて追加で営業許可・営業届出が必要
自宅で手作りしたパンをそのまま自宅で販売するだけなら、「菓子製造業の営業許可」以外の許可は不要です。しかし、その他の方法でもパンを販売する場合には、追加で営業許可・営業届出が必要になる場合があります。例えば、パン工房と一緒にイートインスペースを作って、パンと一緒にドリンク類などを販売する場合には「飲食店の営業許可」が必要です。
また、自宅で作ったパンを包装し車で移動販売する場合には、「移動販売の営業届出」が必要となります。
まとめ
パンを移動販売するためには、「食品衛生責任者の資格」と「移動販売の営業届出」が必須です。また、販売用のパンを自社で製造するなら「菓子製造業の営業許可」が必要です。さらにキッチンカーを使って移動販売する場合やパン工房にイートインスペースを作る場合には「飲食店の営業許可」も必要になります。
自宅で手作りしたパンも「菓子製造業の営業許可」を取得すれば、誰でも販売が可能です。ただし、営業許可取得のためには、リフォームなど自宅の改装が必要になる場合がほとんどなので注意が必要です。パンの移動販売におけるメリット・デメリットや成功のコツなどのお役立ち情報を、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて確認してください。