キッチンカー・移動販売パン屋の開業に必要な4種類の資格・許可・届出を徹底解説!

キッチンカー・移動販売パン屋の開業に必要な4種類の資格・許可・届出を徹底解説!

「キッチンカーの中でパンを焼いて販売できるのだろうか?」

「焼き立てパンをキッチンカーで販売したいが、生地作りからするのは難しいよな・・・」

「工房で焼いたパンの販路を店舗以外に増やせないだろうか?」

こんな疑問や不安を感じていませんか?

その気持ちはよく分かります。なぜなら、キッチンカーを開業する前に販売するメニューを検討する段階で、その場で焼いたパンを販売できたら素敵だけど、現実的にできるんだろうか?という疑問を感じたからです。

飲食業の経験ゼロの状態から、独学でキッチンカーを開業した経験がある私が、キッチンカー・移動販売でパンを扱うために必要な情報を、私自身の経験も踏まえてキッチンカーに興味を持ったばかりの人でも分かってもらえるようにまとめました。

この記事では、

  • キッチンカー・移動販売パン屋の3種類の営業方法
  • メニューとしてパンが持つメリットとデメリット
  • キッチンカー・移動販売パン屋の開業に必須の基礎知識
  • キッチンカー・移動販売パン屋におすすめの出店場所
  • 成功するためのコツ
  • おすすめのキッチンカー・移動販売パン屋

お伝えします。

通常のキッチンカーに比べて、営業許可に関する情報が複雑なパン販売について、初めて学ぶ人にも分かりやすく解説しているので、ぜひ最後までお読みください。

キッチンカー・移動販売パン屋の3種類の営業方法

パン屋

キッチンカーなどの車両を使って移動販売するパン屋には3種類の営業方法があります。キッチンカーを使用する・使用しない、パンを自分で焼く・焼かない、パン工房を開設する・開設しないなどによって異なる、それぞれの営業方法を必要な許可も含めて解説します。

1.キッチンカーで焼いたパンを販売する

キッチンカーでパン屋を開業すれば、キッチンスペースで焼き上げた熱々のパンを販売可能です。2種類の営業許可(飲食店営業と菓子製造業)が必要となりますが、いつでもどこでも焼き立てパンを販売できることはキッチンカーに大きなメリットをもたらします

キッチンカーで採用されるであろうパン作りの方法は「オールスクラッチ製法」と「ベイクオフ製法またはQBD製法」の二つに分類されます。

パン生地から自分で作るオールスクラッチ製法

小麦粉や米粉などをこねる生地作りからパンの焼き上げ・販売までを一つの店舗で行う製法を「オールスクラッチ製法」といいます。「オールスクラッチ製法」を取り入れたキッチンカーでは、キッチンスペースで生地作りから販売まで全ての工程を行います。

オールスクラッチ製法のパン作りでは、「生地作り」「一次発酵」「ベンチタイム」「成形」「二次発酵」「焼き上げ」といくつもの工程が必要となり、多くの時間と手間が必要です。また、効率的なパン作りのためには各工程用の調理機器を導入する必要があり、初期費用の金額も大きくなってしまいます

さらに生地作りから行うので、温度・湿度など注意すべき項目も多く非常に労力を使う製法です。一方で、ゼロからパンを作るので、生地に使う小麦粉の産地・ブレンド方法や酵母の種類(イースト・天然酵母)など原料からこだわり、競合との差別化を図ることが可能です

仕入れた生地を使うベイクオフ製法とQBD製法

大型工場などで製造・急速冷凍したパン生地を仕入れ、店舗で成形・発酵・焼き上げることも可能です。この製法なら、長時間かかるパン生地作りを省略できるので、短時間でのパン作りが可能です。オールスクラッチ製法に比べて必要な調理機器も少ないので、初期費用の金額を抑えられるでしょう。

冷凍生地を仕入れ後、成形して焼き上げる方法は「ベイクオフ製法」と呼ばれます。それに対して、成形・発酵まで工場で完了した冷凍パン生地を仕入れて、パン屋では仕入れた生地を焼き上げるだけでパンが完成する方法を「QBD製法」と呼びます。

2.キッチンカーで調理したパンを販売する

キッチンカー

食パンやコッペパンを仕入れ、キッチンカーでサンドイッチ・ホットドッグ・揚げパンなどの調理パンを作り、販売することも可能です。この方法であれば、パン作りに時間をかける必要はなく営業許可も1種類(飲食店営業)で開業できます。パンそのものでの差別化は難しいので、調理パンメニューを工夫して競合との差別化が必要です。

サンドイッチ・ホットドッグ・揚げパンを販売するキッチンカーの開業や運営方法のコツについては、以下の3記事で詳しく解説しています。

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3.工房で焼いたパンを運んで移動販売する

移動販売する車両をキッチンカーにせず、工房で焼いて包装したパンを車両に積み込んで移動販売することも可能です。キッチンカーを購入する場合に比べて、できることは限られますが、車両購入費は安くなり、飲食店営業の許可を取得も不要です。ただし、パンを移動販売することに関する「営業届出」を保健所に提出しなければなりません

包装したパンを移動販売する方法としては、自社工房でパンを焼いて販売する方法と焼き上がったパンを仕入れて販売する方法があります。キッチンカーを使わないパンの移動販売については、以下の記事で詳しく解説しています。

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2023.06.30

自社工房で焼いたパンを車両に乗せて移動販売

パンを自社工房で焼く場合は、移動販売の「営業届出」に加えて、「菓子製造業」の営業許可を取得する必要があります。また、パンを焼くための各種調理機器の購入費用など、パン工房を開設するために多額の初期投資が必要です。初期投資の金額は「オールスクラッチ製法」「ベイクオフ製法」「QBD製法」のいずれを選択するかで上下します。

自社工房を開設するための手間・費用はかかりますが、自分のこだわりを100%詰め込んだパンを製造・販売可能です。さらに、パン製造から移動販売までのスケジュールを自分でコントロールできるので、時間効率を高めたパン屋経営が可能になります。

委託製造・市販のパンを車両に乗せて移動販売

「営業届出」を出せば、自社工房以外で焼き上げて包装したパンを移動販売することが可能です。委託製造先を見つけて依頼すれば、ある程度は独自性を出した自分専用のパンを取り扱うことが可能です。また、スーパーマーケット・コンビニエンスストアで見かけるような市販のパンを卸売業者から仕入れて販売する方法もあります。

自社で工房を構えないので、初期費用の中で大きな金額が必要になるのは、車両購入費・改造費のみです。とにかく少ない初期投資でパンの移動販売をしたい、という人にはおすすめの方法です。

キッチンカー・移動販売でパンを扱うメリット8選

メリット

キッチンカー・移動販売で扱うメニューにはさまざまな種類があります。数あるメニューの中でも、パンが持っている八つのメリットを紹介します。

1.焼きたて・揚げたてパンを移動販売できる

パンを移動販売するためにキッチンカーを導入すれば、キッチンカースペースで焼きたて・(カレーパンなどは)揚げたてのパンを販売することが可能です。作りたてのパンを食べる機会は日常生活ではあまりないので、商品が持つ独自性として大きくアピールすることが可能です

また、パンを焼く行為によってキッチンカー周辺に焼きあがったパンの匂いをアピールできるので、キッチンカーの近くを通った人に対する集客効果も期待できます

2.作り置きができるので提供スピードが速い

キッチンカーで大きな売り上げを上げるためには、多くの人出が見込まれる土日祝日のイベントへの出店が欠かせません。そして、イベントでは短時間で1人でも多くのお客様に商品を販売できる提供スピードも必要となります。パンは商品の特性上、作り置きが可能なので来客数予測に基づいて、まとめて焼き上げるなどの調整が可能です

さらにキッチンカーの外にテーブルを置くなどして、焼き上がったパンを並べるスペースとそこで接客対応するスタッフを配置すれば、運営効率を上げて、より一層提供スピードを上げることが可能です。

3.さまざまな種類のパンがあり差別化しやすい

パン

パンは「総菜パン」「菓子パン」という大きな区分はもちろん、食パン・クロワッサン・コッペパンとさまざまな種類があります。ソース・具材・クリームを変えればアレンジメニューを簡単に作れるので、競合店との差別化がしやすいメリットがあります。

「総菜パン」の代表格である「焼きそばパン」を例に考えると、中に挟むソース焼きそばを塩焼きそば・ミートスパゲティ・ナポリタンなどの他の麺類に変更することで、メニュー数を増やすことが可能です。ソース焼きそばの中でも「富士宮焼きそば」「宇都宮焼きそば」など、出店場所のご当地グルメを使うなどして、メニュー数を増やせます

4.出店場所に合わせて販売するパンを変えられる

キッチンカー・移動販売パン屋は毎日のように出店場所が変わります。出店場所・時間帯が変われば、客層・求められるニーズも変わりますが、パンの場合はその日に焼くまたは仕入れるパンの種類を変えて、出店場所の客層に受けが良く・ニーズを満たす商品を常に販売できます

もちろん、他のメニューと同様に販売したい(利益が出やすい)メニューがたくさん売れるであろう場所だけを選んで、キッチンカー・移動販売車を出店することも可能です。

5.主食にも間食にもなり需要が高い

パンは主食として朝昼夜ご飯のときに食べられるメニューでもあり、菓子パン・総菜パンを中心に間食として食べられることも多く、さまざまな食べ物の中でも需要が安定して高い特徴があります。

これを裏付けるように総務省統計局の家計調査によると、1世帯当たりの年間支出額は、2010年にパンの支出額が米の支出額を初めて上回りました。その後は、記事執筆時でデータのある2022年の調査結果まで一度もパンと米の金額が、逆転されていません。

2022年のデータでは1世帯当たりの年間支出額はパン:2万6千177円、米:1万5千236円となっており、パンは米の約1.72倍となっています。

【参考】総務省統計局公式サイト|家計調査(家計収支編) 時系列データ(総世帯・単身世帯)

6.朝から夕方まで1日を通して安定して売れる

パン屋

パンは主食としても間食としても、広く食べられる特徴があります。したがって、売れやすい時間帯についてはある程度の偏りがあるものの、1日を通して安定して売れやすいメリットがあります。もちろん時間帯によって売れやすいメニュー・売れにくいメニューはあるので、売り上げを最大化するためには、販売メニューの入れ替えなどの調整が必要です。

7.季節ごとの差が少なく年間を通じて安定して売れる

キッチンカーで販売するメニューの中には、かき氷や焼き芋のように特定の季節(時期)のみ販売量が増加するものがあります。それに対して、パンの場合は寒温があるわけでもなく常温の食べ物なので、1年間を通して大きな売り上げの上げ下げなく、売上金額が安定するメリットがあります。

これを裏付けるように、総務省「家計調査」をグラフ化した農林水産省のデータによると、1カ月ごとの米とパンの購入量を比較した場合、米の購入量は新米が出る9月・10月がずば抜けて多いのに対して、パンの購入量は1年間を通じてほぼ一定です

【参考】農林水産省公式サイト|家庭における1世帯当たりの米、パン、めん類の購入量の推移

8.移動販売なら1日の中で何回も出店場所を変えられる

包装するパンを車両に乗せて移動販売する形であれば、車両を駐車・パンを並べる・のぼりや看板を設置するだけで、すぐに販売を開始できます。撤収準備も短時間で完了します。したがって、1日の中でも朝・昼・夜と人が集まる場所にピンポイントで出店することが可能です。

実際にパンを販売する移動販売車の中には、店舗・会社の駐車場など複数の出店場所を確保しておいて、それらの場所をローテーションで巡る出店方針を採用しているところがあります。同じ場所でも出店日によって、売れ行きにバラつきがあるので、いつものように出店して売れ行きが悪ければ30分程度で撤収して次の場所に行く、という流れを繰り返して、1日当たりの売上金額を最大化しています

キッチンカー・移動販売でパンを扱うデメリット5選

デメリット

キッチンカーや移動販売車でパンを取り扱う場合に、パンの持つ特徴の一部はデメリットになります。五つのデメリットについて解説し、どのように対処するのがよいかについてもお伝えします。

1.オールスクラッチ製法は完成まで手間・時間がかかる

自分で焼いたパンをキッチンカー・移動販売で売る場合には、パン作りに大きな手間・時間・費用が必要です。特に「オールスクラッチ製法」の場合は「生地作り」「一次発酵」「ベンチタイム」「成形」「二次発酵」「焼き上げ」と6工程が必要となり、それぞれの工程に厨房機器を準備しなければなりません。

さらにそれぞれの工程ごとにスキル・ノウハウも必要になるので、開業するには大きなハードルを超えなければなりません。自家製パンにこだわるのであれば、調理工程の一部を省略できる「ベイクオフ製法」「QBD製法」を取り入れることも検討しましょう。

2.流行り廃りがあるので常に新メニューが必要である

パン業界では一時的に特定のパンが流行ることがあります。一例をあげると、高級食パン・塩パン・メロンパンなどがあります。このような特定のメニューに特化したキッチンカー・移動販売を開業するなら、いずれブームが終わることも見越して、あらかじめ事業の撤退時期を意識した事業計画が必要です。

末永くパン屋を続けようと思うなら、特定のパンに依存することなく、定番のパン・流行っているパン・期間限定のパンなど、ある程度は幅広いメニュー展開が欠かせません

3.キッチンカーでパンを焼く場合提供に時間がかかる

パン生地

パンの種類やオーブンの機種・火力にもよりますが、一般的にはパンを焼くためには10~20分ほどの時間が必要です。キッチンカーでパンを焼いて販売する場合には、焼き上げに必要な時間を考慮したキッチンカー運営が求められます。私も実際に焼き上がりの時間がかかるために、長蛇の列になっていたメロンパンのキッチンカーで長時間待った経験があります。

全てのお客様に焼きたてのパンを提供できるのが理想ですが、出店経験を重ねる中で来客が集中する時間帯を把握し、その時間帯に合わせてパンを作り置きするなどの工夫が欠かせません

4.商品単価が安いので複数購入してもらう工夫が必要である

一般的にパンの単価は100~300円程度なので、一度に複数購入してもらい単価を上げる工夫が必要です。なるべく多くの種類のパンを販売することが、複数購入してもらう可能性を高めるには有効でしょう。

その他の客単価を上げる工夫としては、コーヒー・紅茶などのパンと一緒に飲みたくなるドリンク類を販売することもおすすめです。キッチンカーであれば、コーヒー・紅茶をその場でいれて提供できますし、移動販売車であれば缶・ペットボトル飲料なら販売できます。

5.固定店舗も含めて周囲に競合が多くなる可能性がある

パンは広く日常的に食べられる人気メニューであるが故に競合店も多くなります。キッチンカー・移動販売車だけではなく、パン屋・スーパーマーケット・コンビニエンスストアなどの固定店舗も競合になる可能性があるので、周囲の環境にはパン以外のメニュー以上に調査が必要となります。

競合店対策としては、オリジナルパンなどで差別化を図ることが一般的です。その他には、どこにでも移動できるキッチンカー・移動販売車の特性を生かして、競合が多い場所には出店しないという対策も有効です

パンを扱うキッチンカー・移動販売開業時の基礎知識

基礎知識

キッチンカーでのパンの販売またはパンの移動販売を開業するためには、「キッチンカー・移動販売の開業に関する知識」「パン販売についての知識」の両方が必要です。開業を考えているなら、最初に身につけるべき基礎知識を解説します。

食品衛生責任者の資格があれば開業できる

パンをキッチンカーや移動販売車で取り扱う場合には、パンをどこで作るかなどさまざまな営業形態が考えられます。営業形態によって必要な営業許可は異なりますが、いずれの場合も必要な資格は「食品衛生責任者」のみとなります。ときどき「調理免許」が必要になるのではないか、と考える人もいますが不要です。

各都道府県の食品衛生協会が開催している「食品衛生責任者養成講習会」に参加すれば、講習会当日に取得可能です。開催は随時となっており、受講料は1万円前後で各都道府県によって異なります。パンの移動販売に必要な資格・許可・届出については、次の記事で詳しく解説しています。

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2023.06.30

営業形態ごとに必要な許可は異なる

パン作りの道具

一般的にキッチンカーを開業するためには「飲食業」の営業許可が必要となり、パン屋を開業するためには「菓子製造業」の営業許可が必要です。したがって、キッチンカーでパンを販売する場合も、パンをキッチンカーで焼くのか?焼いたパンを仕入れてキッチンカーでサンドイッチなどを調理するのか?などの条件によって、必要な許可の種類は異なります。

キッチンカー・移動販売でパンを扱う営業形態を4種類に分け、それぞれのケースで必要になる許可について解説します。

ケース1.キッチンカーでパンを焼く

キッチンカーにパン製造の調理機器を設置して、キッチンスペースでパンを焼き、お客様に提供する営業形態の場合は「飲食店」と「菓子製造業」の両方の営業許可を取得することが必要です。営業許可取得のためには、出店地域を管轄する保健所の検査に合格しなければなりません。

キッチンカーを開業するために「飲食店」の営業許可が必要であり、パン工房の役割をキッチンカーに持たせるために「菓子製造業」の営業許可が必要となります。両方の許可を取得する手間はありますが、キッチンカーでは焼き立てパンはもちろん、サンドイッチ・揚げパン・ホットドッグなどパンを調理したメニューの販売も可能です

ケース2.焼きあがったパンをキッチンカーで調理する

焼きあがったパンを仕入れて、キッチンカーではサンドイッチ・ハンバーガーなどパンを使ったメニューを調理のみを行う(パンを焼く行為はキッチンカーでは行わない)場合は、一般的なキッチンカーと同様に「飲食店」の営業許可のみが必要です。パンを焼かないので「菓子製造業」の営業許可は不要です。

ケース3.自社工房で焼いたパンを車に乗せて移動販売する

自社パン工房を開業するためには、「菓子製造業」の営業許可が必要です。焼き上げたパンをパン工房に隣接した店舗でのみ販売する場合には、その他の許可などは不要です。

一方、焼き上げたパンを車両に乗せて移動販売する場合には、保健所に「営業届出」が必要となります。保健所に設置されている用紙に必要事項を記載し、所定の書類を添付して提出すれば、届出の手続きは完了です。詳細は地域を管轄する保健所に確認しましょう。

【参考1】東京都福祉保健局公式サイト|自動車関係営業許可申請等の手引

【参考2】千葉県公式サイト|食品営業関係手続(2)営業届出業種

ケース4.委託製造・市販のパンを車に乗せて移動販売する

販売用のパンを自分では作らずに、包装されたパンを製造委託先や卸売業者から仕入れる場合には、「菓子製造業」の許可は不要です。一方で、仕入れたパンを車両にのせて移動販売するため
には、保健所に「営業届出」が必要になります

パンの移動販売を開業するまでの3ステップ

ステップ

パンをキッチンカーなどで移動販売する場合には、まずは事業計画と資金計画を作成し、事業として少なくともシミュレーション上は成り立つことを確認します。その後、実際にキッチンカー・移動販売を開業するまでにやることは「営業許可を取得に向けた保険所での情報収集」「キッチンカー・移動販売車の発注」「営業許可取得と営業届出および開業」の3ステップに分かれます。

ステップ1.営業許可の種類・取得条件を保健所で確認

パンをキッチンカーでの調理販売・移動販売の開業を考えているなら、まずは地域を管轄する保健所に出向いて相談をしましょう。相談内容は、自分の考えている営業形態のために必要な営業許可・営業届出は何か?その営業許可・営業届出を実現するために必要な条件は何か?の二つです。

なぜなら、同じ形での営業でも、地域によって必要な営業許可の種類が違ったり、営業許可取得の条件(厨房設備の種類・数など)が異なったりする場合があるからです。自分自身が望む形で開業するためにも、開業までの準備をスムーズに進めるためにも、保健所での事前確認が欠かせません。

ステップ2.キッチンカー・移動販売車の仕様を決め発注

保健所で確認した内容に沿ってパンを取り扱うキッチンカー・移動販売車の仕様を決めたら、キッチンカー製作会社に見積を依頼します。その際には、自分に合った製作会社を見つけるためにも、複数の会社への相見積もりを必ず実施しましょう。どの製作会社にするかを決めたら、発注へと進みます。

ステップ3.営業許可取得・届出を完了し移動販売を開始

キッチンカーが納車されたら、飲食店の営業許可を取得するために保健所で検査を受けます。移動販売車の場合には、検査は必要なく、必要書類の記載・準備を整え、保健所に営業届出を提出すれば、必要な手続きは完了です。

キッチンカーの場合の検査時には所定の書類提出が必要になります。この書類は、検査日よりも前に記載内容に漏れ・修正点がないかを保健所で確認可能です。したがって、キッチンカーの納車を待つ期間中に、保健所での確認も含めて提出書類の準備が整えば、納車されたらすぐに検査を受けられます。

私の場合は、納車を待つ間に書類の準備を完了させておいたので、納車日の翌日にキッチンカーの検査を受け合格し、さらに翌日(納車日の2日後)からキッチンカーの営業が可能になりました。事前の準備を漏れなく行えば、誰でもこのようにスムーズな開業が可能になります。

パン工房を開設や、キッチンカー内でのパン焼きを考えている場合には、菓子製造業の営業許可取得も必要になるので、より保健所と綿密な連絡を取り、検査の段取りを組むことが求められます。

必要な営業許可の取得・営業届出が完了すれば、いよいよキッチンカー・移動販売車の開業です。試行錯誤を繰り返しながら、当初描いていた自分のキッチンカーライフを実現するために日々取り組みましょう。キッチンカー・移動販売の開業については、以下の記事で詳しく紹介しています。

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2021.02.16

パンを焼くか否かで車両・設備は大きく変わる

ワーゲンバス

パンを扱うキッチンカー・移動販売の開業時に必要な初期費用の中で大きな割合を占めるのは、車両本体と車両に設置する調理設備の購入費です。そして、開業に適した車両の種類(大きさ)と調理設備の内容は、車両でパンを焼くのか?もしくは移動販売のみ行うのか?によって大きく異なります。それぞれの場合ごとに適した車両・調理設備について解説します。

パンを焼くなら普通車が必要で設備費は製法次第

キッチンカーでパンを焼くなら、さまざまな調理設備の設置が必要です。さらにキッチンスペースでの接客などの作業を考えると、ベースとなる車両は1.0t普通車トラック以上のサイズがおすすめです。サンドイッチ・ホットドッグなど仕入れたパンを調理する営業形態なら、軽トラックをベースとしたキッチンカーでも良いでしょう。

ベース車両が軽トラックのキッチンカーの相場価格は230万円以上となり、1.0t普通車トラックがベース車両のキッチンカーの相場価格は340万円以上が一般的です。これに加えて、キッチンカーでパンを焼く場合には、以下のような調理設備が必要です。

  • オーブン:20万~40万円
  • ミキサー(生地をこねる機械):15万〜30万円
  • ホイロ(発酵器):5万〜30万円
  • モルダー(ガス抜き・成形機):50万〜100万円
  • リバースシーター(パン生地を薄く伸ばす機械):10万~30万円
  • コールドテーブル:12万~20万円

「オールスクラッチ製法」の場合はこれら全ての調理設備が必要となるので、初期費用として車両代に加えて112万~250万円の設備費が必要です。一方、「ベイクオフ製法」または「QBD製法」の場合は、それぞれの製法に合わせて必要な調理設備の購入費が初期費用として必要です。このように、キッチンカーでパンを焼く場合には、どの製法を選ぶかによって設備費の金額は変わります。

移動販売のみなら軽自動車でも対応可能

車両で調理せずに、他の場所で焼いたパンを移動販売するだけなら、使う車両は軽自動車でも問題ありません。極端な場合は、軽自動車の後部座席を倒してトランクの場所を広げ、そこに包装したパンを並べれば移動販売が可能です。

パンの移動販売のみなら中古車も候補になる

自動車ディーラー

初期費用を抑える目的で、中古キッチンカーの購入を検討する人もいますが、キッチンカーの状態によっては修繕費などでかえって高くつく場合もあります。このように予想以上の出費が必要な事態にならないために、中古キッチンカーを購入するときには、車両部分・調理設備の両方の状態を見極める力が必要です。

自分にその目利き力があるか、プロの力を借りられる人以外は、中古キッチンカーには手を出さない方が無難です。中古キッチンカーの購入については、以下の記事で詳しく説明していますので、中古キッチンカーの購入を検討している人は、実際に購入する前に一読することをおすすめします。

» キッチンカー(移動販売車)を中古で買う時の費用

キッチンカー(移動販売車)を中古で買う時の費用

2016.02.23

それに対して、個別包装したパンを移動販売するだけの用途で車を使うのであれば、中古車でも問題ありません。通常の中古車と同じように信頼できる中古車販売店を見つけ、そちらで自分の移動販売計画に適した車両を購入すれば十分目的を果たすことが可能です。

パンのキッチンカー・移動販売におすすめの出店場所

キッチンカー

キッチンカーでパンを調理したメニュー(サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグなど)を販売する場合には、ランチ時間帯のオフィス街・イベント会場・公園・観光施設などが出店場所としておすすめです

メニューと客層の好みが一致すれば、ショッピングモールも有望な出店場所です。ただし、モール内に同一メニューを販売する固定店舗がある場合には、出店が許可されない場合もあるので、モールの管理者への事前確認が欠かせません。

焼く場所に関係なくパン単体を移動販売する場合には、公園・駅前広場など軽食として受け入れられる場所への出店がおすすめです。また、保育園・幼稚園の駐車場で帰宅する家族連れをターゲットにしたパンの移動販売車を実際に私自身が見たことがあります。移動販売なら、人通りのある事務所などの駐車場を借りて出店することも可能です。

キッチンカー・移動販売パン屋で成功するコツ5選

ポイント

キッチンカー・移動販売パン屋で成功するためには、自分が扱うパンの特徴を完全に理解することはもちろん、その魅力を外部に100%伝えた上での店舗運営が求められます。パン屋を成功するために守るべき五つのコツを解説します。

1.メニュー・原料にこだわり競合店と差別化する

キッチンカー・移動販売パン屋で成功するためには、自分のお店を選んでもらう理由が必要になります。競合店では販売していない独自のメニューを販売して、競合店と差別化することはそのための代表的な方法です。菓子パン・総菜パンとさまざまな種類があるパンなら、ちょっとした工夫で比較的簡単に差別化が可能です

また、パンの原料となる小麦粉に国内産のものを使うことでも差別化できます。さらに、小麦粉の代わりに米粉を使うなどして、アレルギーに配慮したメニューを販売することも差別化の方法として有効です。

2.出店場所のニーズに合わせたパンを販売する

メニューとしてのパンが持つ大きなメリットの一つは、さまざまな種類を販売できることです。したがって、出店場所のニーズに合わせて、毎日のように販売メニューを変更することも可能です。例えば、公園などで小さな子どもを連れた家族をターゲットにするなら、子どもへの受けが良いキャラクターデザインのパンをおすすめします。

出店場所のニーズが分からないときには、出店場所周辺の競合店でどのような種類のパンが販売されているかを調査すると、ある程度は予測することが可能です。

3.パンに付加価値を付けて販売単価を上げる

パン

キッチンカーやパン屋に限らず、小売業を成功させるためには販売単価(客単価)を1円でも高くすることが求められます。そのために有効な方法はパンに付加価値を付けることです。競合店では取り扱っていない珍しいメニューを販売することのほかに、アンパンに使う小豆を北海道産のブランド小豆にするなど原料への工夫でも付加価値を付けられます。

その他には、原料となるバター・牛乳などの乳製品を地元産の商品を使うことで、地産地消という側面での付加価値を付けることも可能です。

4.コーヒーなどドリンク類を販売し客単価を上げる

メインメニューとドリンク類をセットにして販売する方法は、キッチンカー事業において客単価を上げる最も基本的で有効な方法の一つです。パンとコーヒー・紅茶との相性は抜群なので、パンを販売するキッチンカーでも、パンとドリンク類のセット販売は客単価を上げる方法として有望です。

キッチンカーの場合は、ドリップコーヒーなどさまざまなドリンク類を調理・販売できますが、営業届出のみの移動販売車の場合は調理ができません。したがって、セットメニューにするドリンク類は缶・ペットボトル飲料のみが対象となります。

5.キッチンカー成功の基本施策を徹底的に実行する

パンを扱うキッチンカー・移動販売で成功するためには、キッチンカー運営の基本となる施策を愚直に徹底して行うことが求められます。特に重要なのは「出店場所の確保」と「通行人をキッチンカーに呼び込む外装」の二つの施策です。

キッチンカー運営では、出店ができない日の売り上げはゼロになってしまうので、「出店場所の確保」は最も優先して行うべき業務の一つです。キッチンカー運営の基本は、人が集まる場所に出店することなので、特に多くの人出が予想される土日のイベントへの出店は絶対に欠かせません。

出店当日には、キッチンカーの前を通った人を呼び込む外装への工夫が求められます。具体的には販売しているパンの魅力を一目で伝えられるような、キッチンカーのカラーリング・のぼり・看板・タペストリーなどの準備が欠かせません。必ず守るべきキッチンカー運営の基本施策は、下記の記事で詳しく解説しています。

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「キッチンカーは儲かるのか?成功者に見る6つの傾向」

2020.12.23

キッチンカー・移動販売パン屋おすすめ6選

ホットドッグを販売するキッチンカー

キッチンカーまたは車両を使って移動販売しているパン屋を6店舗紹介します。キッチンカー内でオールスクラッチ製法でパンを製造している店舗から、パン工房で焼いたパンを移動販売している店舗まで幅広くお伝えします。

そらいふ

 

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「そらいふ」は、仕込みから焼き上げまでを行っている手作りパンを販売するキッチンカーです。出店エリアは埼玉県一円と(高崎・前橋を除く)群馬県内となっています。土日は各地で行われるイベントや公園、平日は大学キャンパスなどに出店しています。

 

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キッチンカーでは珍しい、オールスクラッチ製法で作られる「そらいふ」のパン生地は、国産米粉や塩麹も使われた独自配合です。ホットドッグ・あんばたーコッペパン・かすたーど&ホイップコッペとコッペパンを調理したものがメニューの中心となっています。

ジューヌブルー

「ジューヌブルー」はキッチンカー内で焼き上げたメロンパンを販売するキッチンカーです。外はカリカリ・中はふわふわの絶品メロンパンを奈良県内の各地で販売しています。一般的なメロンパン(プレーン)に加えてビターチョコメロンパンも販売中です。さらに、メロンパンにホイップクリームをトッピングしたパンを販売することで、商品単価を上げる工夫が行われています。

TSUBASAメロンパン


「TSUBASAメロンパン」は焼きたてのメロンパンを販売するキッチンカーです。大阪市内・東大阪・茨木市・京都府一円の営業許可を取得しており、これらの地域の商業施設やイベントを中心に出店しています。メロンパンの種類は、一般的なメロンパン・メイプルメロンパン・チョコチップメロンパンなど多岐にわたります。

大阪府大阪市旭区の千林商店街には固定店舗もあり、こちらではメロンパンに加えてカレーパンも名物となっています。

BOUL’ANGE FOOD TRUCK


「BOUL’ANGE(ブールアンジュ) FOOD TRUCK」は株式会社ベイクルーズが北海道から福岡県まで店舗展開している、オリジナルブーランジェリーである「BOUL‘ANGE」のパンを移動販売しています。代表メニューである、上質な国産バターとオリジナルブレンドの小麦を使い、外はサクッ中はふわっとした食感を実現したクロワッサンを始めとする各種パンを曜日問わず静岡県藤枝市にある蓮華寺池公園を中心に出店して販売しています。

エッセンツァイト


「エッセンツァイト」は東京都葛飾区にパン工房を構え、おいしい自然素材で作った焼き立てパンを専用車両で移動販売しています。販売するメニューは、モーニングブレッド・菓子パン・調理パン・サンドイッチ・焼き菓子と多岐にわたります。インスタグラムでは、移動販売車に所狭しと詰められた大量のパンを販売する様子が確認可能です。

おかしのいえとパン屋のぱんさん

「おかしのいえとパン屋のぱんさん」は、東京都武蔵野市にパン工房と販売用のキッチンカーを構えています。キッチンカー内のショウケースでは、名物の武蔵野あんぱん・フランスパン・くるみパンなど約20種類のパンとクッキー・スコーン・ブラウニーなど10数種類の焼き菓子を販売しています。

まとめ

キッチンカー・移動販売車でのパン製造と販売には、「飲食店の営業許可」「菓子製造業の営業許可」「移動販売についての営業届出」が関係するので、自分の営業形態に合わせて必要な許可・届出が必要です。しっかりと許可が取得できれば、キッチンカーの中でパンを焼いて販売できます。

自分で焼いたパンを販売する際には、調理工程を減らすために工場などで製造したパン生地を使うことも可能です。このような方法を使えば、調理時間を短くした上で、焼き立てパンをキッチンカーで販売できます。また、個別包装のパンを車両に積み込み販売する方法なら、「移動販売についての営業届出」を保健所に提出すれば、検査不要で販路を拡大できます。

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コロナの影響でキッチンカーの需要は下がるのか?上がるのか?

2019年に中国の武漢で発生した「新型コロナウイルス」がキッチンカー業界に与える影響についてまとめました。

コロナがキッチンカーに与える影響

人々がオフィス外からベッドタウンに移ったことと、巣篭もりをしていることでキッチンカーの役割に変化が起こっています。