東京を中心とした都心部から広がったキッチンカーは、現在では地方地域まで広がっています。地方でのリアルなキッチンカー運営事情をお伝えするために、千葉県市原市を拠点に活動し、2023年12月12日に放映された「マツコの知らない世界」でも「主婦キッチンカー」として出演された「たねやキッチンさん」にインタビューさせていただきました。
キッチンカーを始めたきっかけ・メニュー選び
千葉県市原市を拠点にキッチンカーを運営するたねやキッチンさんに、キッチンカーを開業したきっかけ・飲食業の経験・メニューをどのように選んだかなどについて伺いました。
うちは農家(主な作物は、大根・スイカ・メロン)をやっているのですが、以前から飲食をやりたいと考えていました。
キッチンカーを始めようと思った、一番大きいきっかけは、千葉県に大きな被害をもたらした2019年の台風です。キッチンカーなら機動力があり、衛生面でも問題なく色々な所へ食べ物を届けることができるのではと考えたからです。
また、「どんなにおいしく育てた野菜でも形やサイズなどが規格外なら廃棄せざるを得ない」、これは日本の多くの農家が抱える悲しい現実です。
しかし、キッチンカーで料理として提供すれば廃棄する野菜の量が減り、皆様においしさを伝えられると考えたことも、キッチンカーをやりたいと思った理由の一つです。
いえ、全くありません。ただ、カフェのオープンに関わったことがあり、そのときには多くの食材を試食させていただいたり、メニュー開発に参加させていただいたりしました。
そのときには、厨房の中にも入らせていただいて、調理スタッフの方や食材を販売する会社の方とお話しする機会があったので、飲食業のプロってこうなんだ、とかそういうのとかを飲食業で働かなくてもいろんなことを知れたっていうのは良かったです。
いきてます。例えば、キッチンカーのような飲食業では、食中毒は絶対に出しちゃいけないので、そのための食材管理を徹底しないといけないことなどです。
農林水産大臣の認定を受けた六次産業化事業計画に基づいて、キッチンカーを開業する予定でした。
認定を取得するための事業計画の中では、キッチンカーのメニューは、大根とかスイカとかメロンとか正規品じゃないものを使う計画だったので、それらの野菜を大量に使う(カレー・ポタージュスープなどの)メニューを選びました。
地方地域でのキッチンカー開業について
たねやキッチンさんは、もともと千葉県市原市で農業を営んでいて2015年には大根の無人販売、2016年にはテントでのスイカ・メロンの販売を開始しました。農作物の直売から、キッチンカー開業に至った経緯をたねやキッチンさんに伺いました。
最初は、自宅の敷地にお店(農家カフェ)を開こうと思ってたんです。だけど、だめだなって思って、それならキッチンカーだなって思ってっていう感じですね。
それで、2020年2月にフードトラックカンパニーさんの「キッチンカー開業セミナー」に参加させていただきました。
自社農園で作った野菜を使った、六次産業としてキッチンカーを開業する予定だったので、農林水産大臣の認定を受けるための六次産業化事業計画作成・キッチンカー開業準備・補助金対策を並行して進めました。
2020年2月にセミナーに参加して、キッチンカーをスタートしたのは2022年4月だったので、2年ちょっとかかりました。
六次産業を絡めなければ、もっと短い期間で開業できたと思います。
地方地域でのキッチンカー運営について
千葉県市原市を中心に地域で活動するたねやキッチンさんに、地方地域でのキッチンカー運営状況について伺いました。
キッチンカー運営の楽しさ
お客様から直接おいしかったと言ってもらうのが、何よりも嬉しいです。また、リピートしてくださるかたからの連絡は、やりがいにつながっています。
食べ物だけじゃなくて、キッチンカーの装飾なんかをやると、お客様の反応が全て見れるのが楽しいです。
出店が何度も一緒になったキッチンカーの運営者さんとは交流があります。
あとは、キッチンカーを開業する前に、「キッチンカー始めようと思っているんですけど」、という感じでうちに来て仲良くなった人と、交流を持って情報交換します。
キッチンカーの出店場所・出店場所の探し方
もともと、大根を出品していた道の駅と直売所は、自分の方からお願いして出店させてもらえることになりました。
それ以外のイベントなどは全部先方から声をかけていただきました。
InstagramのDMとか、あとはJA市原市の方の紹介とかがあります。市原市農林業振興課の方たちも六次産業化に関わっているので、(たねやキッチンさんがキッチンカーをやっていることを知っているので)イベントがあれば声をかけてくれます。
東京のイベントから声をかけてもらったこともあります。ただ、仕事量的に難しかったので、お断りすることが多いですね。
特に思い出に残っている出店
みんなが、このメニューはこの間食べたから、今回はそっちのメニューにしようとかって言って、リピーターのお客様が買ってくれる量っていうのが、前回の出店時よりも減るわけじゃなくて、増えていくことの方が多くて。
出店したときに売れ残らなかったり、たくさん売れたりすると、ああ、ここでは、私をみんなが本当に待っててくれてるんだみたいな。(販売しているメニューは)そんなに安いわけでもないけど、買ってくれるってことは、嬉しいことだなと感じます。
開業当初の想定と異なる点
※編集部注:たねやキッチンさんは現状では、ほとんどの週で3,4日間出店されています。
最初は、そんなにイベントに出ると思わなかった。年に5回ぐらい出るかなぐらいのつもりだったのに、月に5回ぐらい出たりとかっていうときもあるんです。
運営している上で苦労すること
雨風などの天候を見ながらキッチンカーの準備をするのか?しないのか?を迷うときですかね。また、出店後にすごい雨になって、色んなものが濡れてしまうと、乾かすのが大変です。
ときどき、取り残されたように、お客様が来ない日もあるので、そのときは、作ったものが無駄になるのでがっかりすることもありました。
あと、イベントの場合は「何時までに会場入りする」というルールがあるので、入り時間によっては、手順とかも考えて早朝から仕込まなきゃいけないとかは厳しいですね。
キッチンカー運営の人員体制
そうですね、一人でやっています。
今までに数回、接客を担当する人を雇ったことはあるんですが、慣れてきたので今は一人で運営しています。
1日・1週間のスケジュール
基本的には、水曜日・木曜日・日曜日にキッチンカーを出店しているので、材料の買い出しは月曜日か金曜日に行くことが多いです。
キッチンカーの出店日前日の22時頃までに、カレーなどの仕込みを終わらせておき、カレーはそこから、営業時間中もずっと温めたままです。
ご飯を炊いたり、スープを作ったりするのは、出店時間の3時間ぐらい前に行います。
出店場所に到着後は、15~30分程度でキッチンカーをオープンできる状態に準備します。
営業終了後は、カセットコンロや水漏れ、機械が割れたり壊れたりしないように、キッチンカー内に物を積み込んで帰ってきます。
帰宅後は、1時間ぐらいかけて、ごみの廃棄・排水処理・洗い物をして終了です。
地方地域でのキッチンカー運営に向いている人
2022年4月から千葉県市原市を拠点にキッチンカーを営業するたねやキッチンさんに、地方地域でのキッチンカー運営に向いている人の特徴について、ご意見を伺いました。
向いているのは、そうですね、ダメだったときに、「はい!次」と思える人。メンタルが強い人かな。
反対に、メンタルが弱い人には難しいかな、と思います。
あとはやっぱり、自分の個性をちゃんと料理に表現できる人が向いていると思います。なんでもいいんですけど、自分の個性が出せないと、厳しいかな。
お祭りの屋台と違って、どこかで似たようなものが売られているというよりも、お客様にとっては、嬉しい出会いとして、自分のキッチンカーでしか味わえないものを提供できる人は向いていると思います。
あとは年齢・性別を問わず体力がある人がいいと思います。キッチンスペースへの乗り降りも含めて、キッチンカー運営は体力勝負の面があるので。
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