「着飾る恋には理由があって」のドラマ効果でキッチンカーが注目されています。
株式会社フードトラックカンパニーの公式の立場ではドラマのキッチンカー協力と監修をさせていただいていますが、いち視聴者の立場&キッチンカーの専門家の立場で、ドラマのキッチンカー経営者の藤野駿くんの魅力について考察していきます。
藤野駿くんがお仕事をしているキッチンカーのことをみなさんも身近に感じていただけたら嬉しいです。
※ストーリーや人物設定など、ドラマの予備知識はぜひテレビ放送や公式サイトなどでご確認ください。
▲藤野駿くん(横浜流星さん)&仲良しのこうじ (C)TBS
藤野駿くんにとってシェアハウスは運命のお家
これまでの考察で、2021年4月時点での法律では、キッチンカーFuji Balの仕込み場所として、キッチンカーとは別に営業許可を取得している調理施設が必要ということを触れました。
シェアハウスのオーナー早乙女香子さんもフードスタイリストという職業をされていて、第1話では秋葉亮くんが手配しきれなかったel Arco Irisのオープニングセレモニー用のケータリングをお仕事として提供しています。
このケータリングについて、早乙女香子さんはおそらく、このシェアハウスにある仕込み厨房で取得した営業許可で提供をしたと思われます(高級マンションのオーナーなので、ほかにも飲食店を経営されている可能性も)。
そして、藤野駿くんが「個人事業主……!」と叫ぶシーンもあり、早乙女香子さんと藤野駿くんは別事業者のようです。
さて、この保健所から営業許可を受けた仕込み場所、早乙女香子さんと藤野駿くんと共有で使えるのでしょうか?
答えは「使えます」。
シェアハウスでは、早乙女香子さんが営業許可を受けている施設を、藤野駿くんが香子さんにOKをもらって間借りしている設定と見て間違いなさそうです。
キッチンカーの運営者自身が仕込み場所自体を自分で所有・賃貸のほかに「施設の営業許可を受けている方の責任のもと、間借りして使うこと」ができます。ルームシェアの家賃の中に、仕込み用の厨房の使用料も含まれているかもしれませんが、早乙女香子さんがOKしていれば使用料は無償でもまったく問題ありません。
余分なものを持ちたくないミニマリスト男藤野駿くんからすれば、まちがいなく「運命」のお家。
「好きなとき、好きなように、好きな誰かと暮らす。そんな日が来てもいいかなって思ったの。」という早乙女香子さんのドラマの根幹となる名セリフがありましたが、藤野駿くんがこのシェアハウスに巡り合うことができて本当によかったなぁ……と思います。さらにもう一つの運命の出会いが待っていますし。
運命のお家でも、こうじとは離れ離れ……
しかし、早乙女香子さんがシェアハウスで営業許可を取るのにワンちゃんのこうじの存在が問題にならなかったのか気になるところです。
結果的にシェアハウスでの営業許可が取得できているので、保健所からも認められたということに。
フィクションの話ですが、たぶん、フィクション上の保健所職員さんも早乙女香子さんの営業許可申請には相当に頭を悩ませたはずです。
せっかくなので、「こうじのいるお家で営業許可が認められるまでの早乙女香子さんと藤野駿くんの努力」と「こうじからどう見えているのか?」の2点について考察してみたいと思います。
こうじは賢い子のようです。ボーダーコリーのメスで2011年生まれの10歳。「◯◯したらダメだからね」とよく言い聞かせたらちゃんと守ってくれそう。抱っこされていてもいつもおとなしい子でした。
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でも残念ながら、こうじが賢い子かどうか保健所はまったく考慮してくれません。
そうなると。
ここでのポイントは、業務用の厨房にこうじが入らないと客観的に説明できることです。
そのためには、どの範囲を業務用厨房として「区画」した上で申請をするか。これが重要です。
ドラマの映像や資料には映らない箇所もあるとして「業務用の厨房と、こうじの生活エリアを2段階で区切る」、おそらくこれが確認できれば保健所の職員さんも認めてくれるのではないかと考えられます。ほかにも業務用の厨房の扉は普段から確実に閉めるよう指導を受けます。
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「着飾る恋には理由があって」公式instagramでシェアハウスの美術模型が公開されていたので確認をしましたが、しっかり区切られていました!さすがです!
ところで、こうじが10歳でマンションのほうが築年が新しいとすると、早乙女香子さんはこうじがいる前提で、この業務用の厨房を作ったことになります。
ワンちゃんのいる環境で営業許可は不可能ではないのですがたいへん厳しいので、早乙女香子さんは保健所からも修正箇所を細かく指導されながらも、粘り強く根気強く改修工事と申請をおこなって営業許可取得にたどり着いたはずです。
考察してはじめて見える人柄が人物設定と一致しているとか、脚本の金子ありささんや美術さんのこだわり、ものすごいクオリティだと思いました。
さて、ということで、こうじは自分のお世話をしてくれる早乙女香子さんや藤野駿くんのお仕事をしている姿を見ることはできません。
たぶん「二人がいないときに限って、いつも美味しそうな匂いがする!」と毎回おなかを空かせながら不思議に思っているはずです笑
(文・松本竜太 フードトラックカンパニー)