いろいろな場所に出かけていって営業をおこなうキッチンカーでは、これまで発電機が使われることが多く、キッチンカーの電源としては一強の座にありました。
2020年には、リチウムイオンバッテリー(蓄電池)製品の多様化が進み、①コンパクトサイズ化、②大容量化、③販売価格競争が始まり、高性能なリチウムイオンバッテリーが個人でも購入しやすい価格まで下がってきています。
2021年秋頃から国際的な原油価格の高騰により、ガソリン代が高くなったこともニュースなどでも話題になっています。
特にリチウムイオンバッテリーは、より高性能な製品が次々と発売されていますので、キッチンカー運営の視点で、発電機とリチウムイオンバッテリー(蓄電池)の燃料代等を比較するポイントについて解説していきたいと思います。
目次
発電機と蓄電池の比較(結論)
具体的な解説は少し難しい内容になるので結論を先に書きます。
- リチウムイオンバッテリーの価格低下により、発電機と蓄電池の市場価格はおよそ同価格帯になっている
- ガソリン価格によるが、発電機の燃料代は、蓄電池よりも約3.1倍高く、蓄電池の電気代は、発電機よりも3分の1程度安い。
- 発電機は燃料を給油をすることで無制限に電力供給ができるが、蓄電池は蓄電池容量が使える電気量の上限(蓄電池を複数個使うこともできる)。
発電機の燃費効率 解説
サンプルとして、フードトラックカンパニーがおすすめしているヤマハ発動機「EF1600iS」の性能で説明していきます。発電機の中で、他のメーカーと比較しても静音性が高いことがおすすめの理由です。
定格出力 | 1.6KVA (1,600VA) ※VA=ボルトアンペア |
定格電圧 | 100V |
定格電流 | 16A |
燃料タンク容量(赤レベル) | 4.2L |
連続運転時間(赤レベル) | 約10.5~4.2時間 (1/4負荷 *2 ~定格負荷) |
YAMAHAのEF1600isは、1600VAの出力を4.2Lの無鉛ガソリンを使って4.2時間〜約10.5時間(負荷による)、出力ができる仕様となっています。
(タンク容量と使用時間が4.2時間と4.2Lなのはたまたまで関係性はありません)
全国の標準的なレギュラーガソリン価格を170円/L(消費税込)とした場合、1回の満タン給油は714円になります。つまり、YAMAHAのEF1600isでは、1600VA × 4.2時間 の電気を作るために714円かかる計算です。1600VA×1時間の場合は170円です。
170円×4.2L = 714円
なので、
1600VA×1時間 = 170円
なお、VA(ボルトアンペア)とは、電気量の論理値を示しています。言い換えれば「家電がどれくらいの電力を消費するかは知りませんが、EF1600iSとしては運転中に1600VAの電力を発電しているんです」という意味になります。
リチウムイオンバッテリー(蓄電池)の燃費効率 解説
次に、リチウムイオンバッテリー(蓄電池)の燃費効率について計算していきます。
サンプルとして、フードトラックカンパニーがおすすめしているEcoFlow Technology Japanの「EF DELTA」の性能で解説していきます。販売価格に対して蓄電容量が大きいことと、短時間での充電ができることがおすすめの理由です。
容量 | 1260Wh |
寿命 | 800回以上(80%+) |
AC出力(x6) | 合計 1600W ( サージ 3100W), 100V AC (60Hz/50Hz) |
蓄電池は、電気を貯めて電気を出力するための装置ですので、インプットするエネルギーも電気です。
ソーラー充電をすれば燃料代は0円!……としたいところですが、キッチンカーの出店をするためには、計画的に安定して充電が必要になりますので、一般的な電気代を使って計算します。
東京電力の第3段階料金(電気をたくさん使ったときの電気代)が、1kWh辺り、30円57銭で使用することができます。
1kWh = 1000Wh = 30円57銭
なお、Wh(ワットアワー)とは実際の電気量のことです。言い換えれば「電化製品がどれだけ動いたかは知りませんが、実際に使われた電力はこれだけですよ」という意味になります。
蓄電池には「電力変換効率(電池に対して電気を出し入れするときのロス)」というものがありまして、インプット時、アウトプット時、それぞれ誤差がありますが約5%とされています。つまり、蓄電池に電気を貯めて使おうと思ったら、実際には約1.05倍の電気が必要で、使用するときには電気が5%ロスされる計算です。
EF DELTAの容量は1260Whです。1260Wを1時間使えるだけの電気量を蓄電できる、という意味です。
EF DELTAに1260Whを蓄電するときのコストは、40.44円になり(30.57円×105%×1260Wh÷1000Wh=40.44円)、EF DELTA 1260Whから取り出せる電力は1197Wh(1260Wh÷95%=1197Wh)ということになります。
30.57円×105%×1260Wh÷1000Wh=40.44円
EF DELTAの出力は1600Wまで使えますので「1600Wを使い続けた場合、44分53秒間使える蓄電容量」ということになります。
60分÷1600W×1197Wh=44分53秒
業務用冷蔵庫(コールドテーブル)の消費電力が200〜230W程度ですので、蓄電池の容量が1200Whの場合、5〜6時間使える計算になります。
すでにお使いの蓄電池や、検討中の蓄電池の容量表記がWhではなく、mAhとなっている場合は、次の計算式で変換をおこなってください。
Wh = (電圧)V× (バッテリー容量)mAh ÷1000
発電機VS蓄電池「燃費」の比較
発電機と蓄電池の燃費を比較していきます。使用する電気機器によって消費電力は違ってくるのですが、インバーターを通した電気出力だけに限って言えば、それぞれ同等となりますので、発電機と蓄電池の出力効率は同じとして比較します。
発電機 | 1600VA×1時間:170円 | 1000VAを1時間辺り 106.25円 |
蓄電池 | 1197Wh : 40.44円 | 1000Wh辺り 33.78円 |
ガソリン高騰の影響もあり、単純な燃料費だけを比較した場合、
発電機の燃料代は、蓄電池よりも約3.1倍高く、
蓄電池の電気代は、発電機よりも3分の1程度安い、でした。
キッチンカーで使う発電機と蓄電池の「使い勝手」まとめ
- リチウムイオンバッテリーの価格低下により、発電機と蓄電池の市場価格はおよそ同価格帯になっている。
- ガソリン価格によるが、発電機の燃料代は、蓄電池よりも約3.1倍高く、蓄電池の電気代は、発電機よりも3分の1程度安い。
- 発電機は燃料を給油をすることで無制限に電力供給ができるが、蓄電池は蓄電池容量が使える電気量の上限(蓄電池を複数個使うこともできる)。
発電機と蓄電池 使い勝手の比較
比較 | 一般的な発電機 | 一般的な リチウムイオンバッテリー |
購入価格 | ◯ 約8〜13万円 | ◯ 約12〜18万円 |
出力1600W | ◯ 対応 | ◯ 対応 |
移動中の使用 | × 危険 | ◯ 要固定 |
連続運転 | ◯ 連続運転できる、上限なし △ ガソリンの確保が必要 | △ 蓄電容量が上限 ◯ 出店場所でも充電できる △ 充電時間がかかる |
燃費1000Wh辺り | △ 約106.25円 | ◯ 約33.78円 |
騒音(dB) | △ うるさい 51〜80dB以上 | ◯ 0dB |
換気 | ⚠ 必要 | ⚠ 必要 |
適正温度 | 5℃以上 | 0〜35℃ |
その他 | ・発電量は製品によって異なる ・キッチンカーでは静音性も重要 ・ガソリンの適切な管理が必要 ・自分が持ち運べる重さ以下で選ぶ | ・容量が多いと選択肢が広がる ・複数個あると容量が増える ・充電にかかる時間も重要 ・自分が持ち運べる重さ以下で選ぶ |