
「キッチンカーを開業したいけど、不衛生なイメージを持たれたくない」
「食中毒を起こさないために、衛生管理はなにをすればいい?」
こんな悩みを抱えていませんか?
キッチンカーで食中毒が発生したニュースを聞くと、キッチンカー事業者にとっては不安になりますよね。
![]() | 監修者 キッチンカー開業コンサルタント |
キッチンカー開業を志す方々の夢を形にする専門家。メニュー開発から車両選定、出店計画、開業資金の計画まで、キッチンカー開業に必要な全てをワンストップでサポートします。フードトラックカンパニーの豊富な実績とノウハウを活かし、成功への最短ルートを共に描きます。
この記事では、
- キッチンカーで食中毒が起こった事例
- キッチンカーで食中毒が発生する原因
- 食中毒を起こさない対策3選
- 食中毒に関するよくある質問
をお伝えします。
本記事を読めば、これからキッチンカーの開業を目指す方でも、キッチンカーで食中毒を防ぐための具体的な方法が分かるようになります。既にキッチンカーを運営されている方にも、参考になる内容になっておりますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
キッチンカーで食中毒が起こった事例

衛生管理の甘さと不衛生な環境により、食中毒が発生する事件は全国各地で報道されています。ここではキッチンカーで食中毒を起こした、3つのニュースを紹介します。
- 千葉県|黄色ブドウ球菌による食中毒
- 群馬県|ノロウイルスによる食中毒
- 東京都|ウエルシュ菌による集団食中毒
どのような背景で食中毒が発生したのか、詳しく見ていきましょう。
千葉県|黄色ブドウ球菌による食中毒
2024年8月8日、千葉県木更津内のホテル併設のプールに出店していたキッチンカーから、食中毒が発生しました。焼きそばを販売していたキッチンカーは3日間の営業停止となり、再発防止策を指導されました。
日時 | 2024年8月8日午後3時〜 |
場所 | 千葉県木更津内のホテル併設のプールに出店していたキッチンカー |
販売メニュー | 焼きそば |
検出された菌 | 黄色ブドウ球菌 |
発生した症状 | 嘔吐・吐き気・腹痛 |
症状を訴えた人数 | 9人 |
食中毒の原因である黄色ブドウ球菌は、人の皮膚に常在しています。黄色ブドウ球菌は調理者の手指が不衛生な場合に、食品を汚染する可能性があります。特に傷口がある場合は、注意が必要です。
また、黄色ブドウ球菌は30℃〜37℃の温度で活発に増殖します。販売窓があるキッチンカー車内は、外気温とほぼ同じ環境になりやすくなります。黄色ブドウ球菌が繁殖しやすい温度になったのも、食中毒になった原因の一つです。
群馬県|ノロウイルスによる食中毒
2024年5月5日、群馬県に出店していたキッチンカーから、ノロウイルスによる食中毒が発生しました。ロングポテトやケバブなどを販売していたキッチンカーは、千葉県の事例同様、3日間の営業停止処分となりました。
日時 | 2024年5月5日午後9時〜 |
場所 | 群馬県に出店していたキッチンカー |
販売メニュー | ロングポテト・チーズハットグ・ケバブ・10円パン・かき氷 |
検出された菌 | ノロウイルス |
発生した症状 | 嘔吐・発熱・吐き気・下痢・腹痛 |
症状を訴えた人数 | 28人 |
食中毒の原因であるノロウイルスは、1年を通して発生します。調理者が体調不良の場合、ウイルスは手を介して食品に付着する可能性があります。
キッチンカー事業者のノロウイルスに関する知識不足と、不適切な手洗いによって食中毒が発生しました。
ノロウイルスによる食中毒を防ぐ適切な手洗い方法は、以下で紹介されています。徹底した手洗いは衛生管理の基本です。ぜひ参考にしてください。
東京都|ウエルシュ菌による集団食中毒
2023年11月19日、東京都よみうりランドのイベントに出店していたキッチンカーから、食中毒が発生しました。お弁当を販売していたキッチンカーは、1日間の営業停止処分となりました。
日時 | 2023年11月19日 |
場所 | 東京都稲城市にある、よみうりランドに出店していたキッチンカー |
販売メニュー | 弁当 |
検出された菌 | ウエルシュ菌 |
発生した症状 | 下痢・腹痛 |
症状を訴えた人数 | 62人 |
食中毒の原因であるウエルシュ菌は、加熱後の料理を常温で長時間放置することで、菌が増殖します。例えばカレーなどの煮込み料理は、火を通しても空気の届きにくい部分で、ウエルシュ菌が生き残ります。ウエルシュ菌は、通常の加熱では死滅しにくい特性があるので、温度管理が重要です。
東京都保険医療局によると、東京都では食中毒による患者数は、2025年1月1日から7月15日時点で 911人です。2024年は1年間では1,536人が食中毒に感染しました。なぜ食中毒の発生件数は減らないのか、これから詳しい原因を見ていきましょう。
キッチンカーで食中毒が発生する原因

限られたスペースで営業するキッチンカーでは、忙しさからのちょっとした油断が食中毒の発生につながります。キッチンカーでよく見られる食中毒の原因を3つに絞って解説します。
- 調理と接客の不衛生な交差汚染
- 作り置きと不十分な加熱
- 菌が繁殖しやすい車内温度
調理と接客の不衛生な交差汚染
食中毒が発生する原因の一つとして、キッチンカー事業者が一人で調理と会計を担当することで発生する交差感染があります。ランチタイムの忙しい時間帯になると、手洗いなどの衛生管理がおろそかになってしまうからです。
- 会計で現金を扱った直後に、食品にふれる
- 生肉や生卵を触った手で、十分な手洗いをせず盛り付けをする
- 食材ごとにまな板と包丁の使い分けができていない
- 手袋を頻繁に交換せず、汚れた手袋のまま作業する
キッチンカーは限られた調理スペースで料理を作り、接客を兼ねることは珍しくありません。不十分な手洗いから手指を介した感染によって、食中毒は発生します。
菌が繁殖しやすい車内温度と作り置き
梅雨から夏場にかけては高温多湿になり、キッチンカー車内は30℃〜40℃近くなることも珍しくありません。キッチンカーは常に販売窓を開けている状態のため、菌が繁殖しやすい車内温度になり、不衛生な環境を作ります。
実際に厚生労働省の「食中毒統計資料」を見ると、例年6月〜8月に食中毒発生件数が多くなる傾向があります。
- 冷蔵庫の冷却力が落ち、食材の劣化が進みやすい
- 手汗や蒸された手袋から菌が広がる
調理の熱や直射日光から車内温度が上がると、食中毒が発生する原因を作ります。
また作りおきした食材を保温しきれず、十分な冷却や再加熱がされないと、食中毒を引き起こす原因になります。キッチンカーは水道や電気・冷蔵容量が限られているため、自宅で作り置きするキッチンカー事業者は少なくありません。しかし車内温度が上がりやすい夏場は、特に注意が必要です。
5月31日、神奈川県横浜市で行われたイベントでは、自宅で作られたお弁当のおかずやご飯を十分な冷却をせず配送した結果、黄色ブドウ球菌による食中毒が発生しました。
作り置き温度の管理ミスにより、食中毒を引き起こすケースは珍しくありません。菌が繁殖しやすい温度を避けるよう徹底した温度管理が重要です。
なおランチタイムのピーク時に効率化が進む作り置きに関しては下記記事で解説しています。キッチンカーの仕込み場所を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
» キッチンカーの仕込み場所を徹底解説!自宅やアパートを改装して使えるのか?
殺菌・消毒不足の不衛生な環境
キッチンカー営業は調理・接客・会計など全ての業務を一人でおこなうことも少なくありません。忙しさから見落とされやすいのが、調理器具の殺菌や消毒です。
- 包丁やまな板は、水洗いをしただけ
- 調理台は一度もアルコール除菌をしない
- ふきんやタオルは殺菌しないまま使い続ける
- 手洗いはしても、消毒しない
菌が繁殖しやすい環境の中では、定期的な殺菌・消毒は欠かせません。殺菌力のあるペーパータオルや使い捨てのふきんを活用すれば、不衛生な環境にならず、忙しい時間帯でも作業可能です。食中毒の原因になる菌をなくすために、殺菌・消毒を徹底しましょう。
キッチンカーの不衛生を防ぎ、食中毒を起こさない対策3選

キッチンカーで食中毒を完全になくすのは現実的ではありません。しかし徹底した衛生管理を身につけることで、食中毒のリスクは大きく減らせることはできます。キッチンカーの不衛生を防ぐためには、厚生労働省が提唱する「食中毒菌をつけない、増やさない、やっつける」3つの原則が重要です。
- 細菌を食べ物に「つけない」
- 食べ物に付着した細菌を「増やさない」
- 食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」
細菌を食べ物に「つけない」
キッチンカーで食中毒を減らす対策として、1つ目の原則は最近を食べ物に「つけない」ことです。人の手には、目に見えない雑菌が無数に存在しているため、徹底した手洗いが欠かせません。
手洗いのタイミングと方法をルール化することが大切です。忙しい時間帯でも、ルールを守ることで不衛生を防げます。具体的な手洗いのタイミングは以下を参考にしましょう。
- 食材にふれる前
- 生の食材を触れたあと
- お客様に提供する前
- 会計やお客様対応のあと
- トイレのあと
手を介した汚染を防げば食中毒を大きく減らせるので、手洗いを徹底することは重要です。正しい手洗い方法は、厚生労働省の動画で紹介していますので、参考にしてください。
細菌を食べ物に「つけない」ために、他にも方法があります。
- 包丁やまな板の使用後は、熱湯消毒・漂白剤洗浄する
- 包丁やまな板は、食材ごとに使い分ける
- ふきんやタオルを頻繁に交換する
- 使い捨て手袋やペーパータオルなどを使用する
- 帽子や服は毎日清潔なものに交換する
- 定期的な清掃と消毒して、不衛生にならない環境にする
キッチンカーで食中毒を起こさないためには、手洗いして細菌を食べ物に「つけない」ようにしましょう。
食べ物に付着した細菌を「増やさない」
食中毒を予防する2つ目の対策は、食べ物に付着した細菌を「増やさない」ことです。菌を増やさないためには、「適切な温度での保管」と「調理後は速やかに食べる」のが不可欠です。
「適切な温度での保管」として具体的な温度は以下を推奨しています。
魚介類 | 5℃以下 |
肉 | 10℃以下 |
果実・野菜 | 10℃前後 |
食材は調理場に出したまま放置するのではなく、冷蔵庫などの適切な場所へ保管することが大切です。直射日光を避け、戸棚などの涼しい場所へ食材を保管するようにしましょう。
他にも作り置きした料理の適切な温度管理と、速やかに食べる目安として、以下を推奨しています。
- 調理した料理は常温保存せず、10℃以下または65℃以上で保温する
- 調理した料理は2時間以内に食べる
営業中にクーラーボックスを利用したり、加熱後はすぐに冷却したり、忙しいなかでも工夫が必要です。食べ物に付着した細菌を「増やさない」ために、「適切な温度での保管」と「調理後は速やかに食べる」ことを意識しましょう。
食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」
食中毒を防ぐ3つ目の対策は、細菌を「やっつける」ために加熱殺菌することです。食中毒菌や寄生虫を死滅させるには、適切な温度と時間の管理が必須です。具体的な加熱殺菌方法は、以下の表にまとめました。
加熱調理品 | 食品の中心部が75℃で1分間以上加熱 |
ノロウイルス汚染のおそれがある食品 | 85℃〜90℃で90秒以上加熱 |
調理器具(包丁・まな板・へらなど) | 80℃で5分間以上の加熱 |
ふきん・タオルなど | 100℃で5分間以上の煮沸殺菌 |
加熱殺菌以外にも薬剤による殺菌方法もあります。拭き取りには清潔なペーパーを使うことで、忙しい時間帯でも殺菌することが可能です。定期的に調理台や調理器具を殺菌して、菌を「やっつける」ことを大切にしましょう。
食中毒に関するよくある質問

キッチンカーの衛生管理について調べると、さまざまな疑問が浮かび上がってくるでしょう。ここではキッチンカー経営するうえで、食中毒に関するよくある質問と回答を3つにまとめました。
- キッチンカーで食中毒が発生したらどうする?
- 食中毒になったときの保険はある?
- 食中毒は夏場だけに発生する?
キッチンカーを開業する前に、一つずつ不安を解消していきましょう。
キッチンカーで食中毒が発生したらどうする?
運営するキッチンカーで食中毒が発生した場合、保健所へ速やかに報告し、患者の安全確保しましょう。具体的な手順は以下のとおりです。
1 | 保健所へ報告 | 営業エリアを管轄する保健所に連絡する (食品衛生法で義務づけられている) |
2 | 営業を中止 | 感染拡大防止のため、原因が判明するまで食材や調理器具にふれない |
3 | 患者の安全確保 | 医療機関へ連絡する 関係者や、イベント主催者に連絡する |
4 | 保健所の調査 | 食中毒の原因を調べる 衛生管理の指導を受ける |
参考:「食中毒処理要領」及び「食中毒調査マニュアル」の改正について
販売したメニューから食中毒が発生したら、何をしたらいいかあせってしまいますよね。まずは保健所に連絡しましょう。患者の安全確保をしながら、営業を中止し、医療機関や施設関係者に連絡します。
一人で抱え込まず周りの助けを借りて、保健所の指示に従いながら再発防止につとめましょう。
食中毒になったときの保険はある?
キッチンカーで食中毒を発生させてしまったときのための保険があります。PL保険(生産物賠償責任保険)は、提供した食品が原因で第三者に体調不良・入院などをさせてしまった場合に、損害賠償金や治療費などを保証します。
例えば全国商工会連合会では、「商工会のビジネス総合保険」を取り扱っており、事業活動リスクを総合的に保証する内容です。保険会社により保証内容は異なりますが、営業休止中の損失を保証する保険があります。一方で「食中毒・感染症利益特約」というオプションになる場合もあります。「商工会のビジネス総合保険」に加入する際には、各保険会社の保証内容を確認しましょう。
他にも「キッチンカーパック保険」は、キッチンカーのさまざまなリスクに備えた、キッチンカー専用の保険です。フードトラックカンパニーと三井住友海上火災保険により共同で作られました。「キッチンカーパック保険」は、食中毒だけでなく、事故による自動車リスク、キッチンカー故障時のロードサービスも付帯しています。
詳しくは下記リンクから、保険内容をご確認ください。もしものときに備えて、PL保険の加入を検討してみましょう。
» キッチンカー(移動販売)事業者向けの「キッチンカーパック保険」のご案内
食中毒は夏場だけに発生する?
食中毒は1年を通して発生します。季節によって発生しやすい食中毒の時期は異なり、細菌が原因となる食中毒は6月〜8月にかけて多くなります。一方でウイルスが原因となる食中毒は、11月〜3月に多くなるのが特徴です。具体的には以下の表のとおりです。
発生しやすい 時期 | 食中毒の原因になる菌 | 特徴 |
6月〜8月 | 腸管出血性大腸菌 (O157、O111など) カンピロバクター サルモネラ属菌 | 高温多湿を好む・35℃〜40℃で活発になる |
11月〜3月 | ノロウイルス | 調理者から食品を介して感染する 大規模化しやすく、年間の食中毒患者の4割以上を占める |
寒いから大丈夫と油断せず、常に衛生対策を続けることが、キッチンカーの信頼につながります。キッチンカーを開業する前に、手洗いの頻度や温度管理、殺菌方法のルールを決めておけば、不衛生なキッチンカーにはなりません。
最初は大変かもしれませんが、キッチンカー運営にも少しずつ慣れ、ムリなく衛生管理ができるようになります。キッチンカー開業に必要な許可証や手順については下記記事で詳しく解説しています。できることから一つずつ進めていきましょう。
» 改正食品衛生法のキッチンカー営業許可への影響を徹底解説!保健所対策は必要?
» キッチンカーの始め方を6つの手順で徹底解説!始めるには必要な物とは?
食中毒が発生する原因を知って、不衛生でないキッチンカーを運営しよう
キッチンカーは手軽においしい食事を楽しめる魅力的なビジネスですが、食中毒が発生しやすい環境でもあります。しかし食中毒のリスクは、不衛生な管理から発生することが多く、知っていれば防げるものばかりです。
- 手洗いの徹底
- 調理者の体調不良による感染
- 調理器具の使い分け
- 加熱・冷却・保温の温度管理
- 定期的な殺菌・消毒
忙しい時間帯から衛生管理をおろそかにし、食中毒が発生するケースは珍しくありません。清潔な環境と丁寧な仕事は食中毒のリスクを下げるだけでなく、お客様からの信頼にもつながります。
衛生管理や開業準備に不安があるなら、キッチンカーのプロから学ぶ開業セミナーを活用するのもおすすめです。正しい知識を持ってキッチンカーを開業できれば、不安は自信に変わるでしょう。
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