
こんにちは!元クレープキッチンカーオーナーのMintです。
この記事では私のクレープ販売歴10年の経験をもとに、クレープの生地の作り方・焼き方について解説します。
キッチンカーでクレープを販売してみたいと思ったものの、
- 「プロが作るクレープ生地を詳しく教えてほしい。」
- 「どうやったらパリパリ系のクレープ生地ができる?」
- 「生地に使う粉はどんなものを選ぶべき?」
など、生地について疑問を感じている方も多いのではないでしょうか?
この記事ではそのような疑問にお答えしつつ、おいしくて「売れる」クレープ生地の作り方をプロから教わりたいという方に参考にしていただける情報を大公開!
体験をベースに分かりやすく解説していきますので、是非最後まで読んでみてください。
目次
家庭用とプロのクレープ生地の決定的な違い

まず前提として知っておいていただきたいのは、家庭用とプロの生地は基本的なレシピ(配合)が違うという点です。
そもそも家庭用と業務用では、使用する道具が違います。
家庭用は基本的にフライパンやホットプレートを使って生地を焼きますよね。
生地を広げる方法としては、フライパンを傾けて回しながら広げるか、お玉をクルクル回して広げるかのどちらかでしょう。
このやり方で生地を広げるために家庭用のクレープ生地はかなりシャバシャバしていて、水分量の多いレシピに仕上がっています。
一方でプロ仕様の生地を広げる場合は「トンボ」と呼ばれる木製(もしくはステンレス製)の道具が使われます。
水分量が少なく粘度の高い生地レシピで焼くという点が、家庭用クレープ生地とは全く違うポイントです。
初心者の方がトンボを使って生地を焼く場合、とりあえずネット上に出てきたクレープレシピを参考にされる方が大半でしょう。
ですがネット上で公開されているレシピの大半は「家庭用」のクレープを前提に考えられたレシピです。
そのレシピでトンボを使って生地を焼いても、当然うまく焼けず失敗しますので注意してください。
このように、家庭用とプロ用のクレープ生地はそもそも水分量に大きな違いがあることを覚えておきましょう。
プロ向け|トンボを使ったクレープ生地におすすめのレシピ

家庭用のクレープ生地をそのままプロ用のクレープ生地にすることは難しいので、ここで基本的な業務用クレープ生地におすすめのレシピをご紹介します。
砂糖 20g
塩 1つまみ
牛乳 400cc
バター 20g
卵(全卵)2個
クレープの生地に使われる粉の種類は、小麦粉以外にも米粉やタピオカ粉、全粒粉、そば粉など各種あります。(詳細は後述)
ですがトンボを使って生地を焼く技術が身についていない段階で変わり種のレシピを採用してしまうと、焼き方が悪いのかレシピが悪いのか、火加減に問題があるのか・・・一体何が問題なのか分からなくなってしまいます。
おいしいクレープの生地作りにおいて、レシピが重要なことは言うまでもありませんが、レシピは生地が上手に焼けるようになってからいくらでも改良できます。
焼く技術をしっかり身につけるためにも、最初は基本的な材料を使ったレシピで練習しましょう。
基本的な材料で練習したほうが、材料費も安く済むのでおすすめです。
前述の生地レシピなら、直径40cmのクレープ用の鉄板で約10枚ほど焼けます。
※生地1枚に100ccの生地使用。
まずはこの配合をベースにクレープ生地の焼き方を練習。
上手く焼けるようになってきたら、こだわりの材料に置き換えて改良していきましょう。
一般的な業務用クレープの焼き方のポイント

ではここからは、一般的な業務用クレープ生地の焼き方のポイントについてご紹介しておきます。
クレープに最適な鉄板の温度と加熱時間
家庭用のフライパンであれば、火をつけて1~2分もあれば加熱できます。
それは鉄板自体が薄く、フライパンの直径も小さいからです。
ですがクレープ用の鉄板は直径40㎝、厚さ6㎜超の業務用なので、クレープの生地が焼ける状態になるには最低でも5分ほどはかかります。
電気クレープ焼き機であればもっとかかるかもしれません。
かと言って強火にしてしまうと、真ん中のガス火の部分だけが極端に加熱されて発煙。鉄板外周は温まっていないという極端な温度差ができてしまいます。
ある程度時間をかけて、熱が均一にいきわたるよう余裕をもって加熱を開始しましょう。
また初めのうちは鉄板の温度がどれくらいが適切なのか、分かりにくいと思います。
最終的にはいちいち温度を測らなくても感覚で分かるようになっていきますが、初めのうちは下記を参考に温度を確認してみてください。
【クレープ用鉄板の温度の目安】
- 水を落としたら小さな泡が出る状態 →180℃
- 水を落としたら玉になって焼き板の上を走る状態 →200℃
ちなみに私は180度くらいで焼くようにしていました。
焼く時の温度もクレープの生地の仕上がりに大きく影響がでますので、目指したい仕上がりによって何度が適切なのかはそれぞれ見極めが必要です。
まずは180℃を目安に練習し、その後試行錯誤しながら調整してみてください。
トンボは事前に水に浸しておくこと
生地を広げる「トンボ」は、乾いた状態で使うと生地がくっついたり破れる原因になります。
よって、生地を焼く前に必ずトンボを水につけ準備をしておきましょう。
水につける時間は10分ほどあればOKです。
鉄板に油は必要?
さらにクレープを焼く際に油を敷くかどうかも、オーナーによって判断が分かれるところです。
ほとんどのクレープレシピには油脂が入っているはずなので、鉄板に敷く油は必須というわけではありません。
ちなみに私は油は敷きませんでした。
敷かなくてもくっつかずに焼けましたし、油を敷く手順が入ると生地を焼く調理スピードも遅くなってしまうため、必要ないと判断しました。
油を塗る・塗らないはレシピによっても変わるので、必要に応じて使うようにしましょう。
クレープの生地に使われる粉と仕上がりの違い

繰り返しお伝えしている通り、クレープの生地はレシピと使う材料によって出来上がりが全く違うものになります。
一般的には小麦粉(薄力粉)がつかわれますが、それ以外にもいろんなものがあるのでいくつか材料をご紹介しておきます。
薄力粉でふんわり仕上げる
薄力粉はクレープの生地に使う材料としては最も一般的です。
薄力粉は何といってもふんわりとした焼き上がりが魅力で、冷めてもおいしく食べられる点でクレープにもっともおすすめの粉だと思います。
薄力粉にもいろんな品種があり仕入れ価格もさまざまなので、あなたが目指す仕上がりに合わせたチョイスが必要です。
わたしもいろんな粉を買って焼き比べたり、原価を計算して販売価格とのバランスを考えるなど相当時間を費やして試行錯誤しました。
またいったん開業した後も試行錯誤は続き、最終的なレシピに落ち着いたのは2年ほどたったころだと思います。
強力粉でモチモチ感を出す
次にご紹介する強力粉は、パンや麺づくりにも使われる粉です。
薄力粉よりもグルテンの量が多いため、クレープに使った場合の仕上がりはずっしりもっちりした食感となります。
強力粉だけで仕上げるとかなり重い仕上がりになるので、薄力粉に混ぜて使うなど、アクセントとして取り入れるのがおススメです。
米粉でグルテンフリーに
次にご紹介する米粉は、グルテンフリー食品として人気が高まっており、米粉のクレープ屋さんも出てくるくらい人気の粉の一つです。
ただし流通量としては小麦粉に比べるとまだまだ少ないため、原価はやや高くなる可能性があります。
またグルテンがないことでやや破れやすく、生地として扱いにくい可能性もありますのでそこはレシピ調整が必要だと思います。
アーモンドプードル(アーモンドパウダー)でパリパリ生地に

アーモンドプードルはアーモンドを粉にした素材で、クッキーやタルトなどにもよく使われます。
アーモンドなので焼き上げた時の香りは小麦粉以上に甘い香りになりますし、とくにパリパリ系のクレープ生地を目指している方にとってはなくてはならない材料です。
サクサク感が大幅にアップしますので、小麦粉の一部をアーモンドプードルに置き換えるのがおすすめです。
アーモンドプードルにはグルテンが含まれていませんので、大量に使用するとしなやかさが一切なくなってしまい、クッキーのようにバリバリに割れてしまいますのでご注意ください。
タピオカ粉(タピオカスターチ)でもっちり仕上げ
強力粉よりもさらにもっちり感を出したい場合には、タピオカ粉(タピオカスターチ)を使用されるケースもあります。
タピオカ粉とは文字通り原料のタピオカを粉にしたもので、他の材料にはない透明感と伸び、もっちり感を加えることができます。
この粉も100%使用するのではなく、薄力粉に一部まぜて使用するのがおすすめです。
もっちり感はあるものの、入れすぎると冷めた時にこんにゃくのようなぶるんとした重い食感になってしまうのでご注意ください。
全粒粉やそば粉で香ばしさと健康志向をプラス
全粒粉は小麦粉の外側の「ふすま」と呼ばれる部分も丸ごと粉にしたもので、普通の小麦粉に比べて栄養価が高く、香ばしい香りが特徴です。
そば粉も小麦粉にはない栄養が豊富に含まれており、香りも強いことからヘルシー志向の方に人気の粉としておススメです。
そば粉を使ったクレープとしてはフランス発祥の「ガレット」が有名です。
日本にもガレット専門店はありますが、独特の香りがあるためスイーツに合わせる生地としては小麦粉レシピのほうが合わせやすいと思います。
パリパリ系?もちもち系?|仕上がりを変えるテクニック

クレープ生地の仕上がりを左右するのは素材だけではありません。
焼き加減によってもパリパリ生地ともっちり生地の焼き分けができます。
パリパリ系クレープ生地の焼き方
パリパリ系のクレープを作る場合、前述のアーモンドプードルを混ぜたレシピが香ばしくおススメのレシピではありますが、それだけではパリパリにはなりません。
パリパリにするためには生地の水分を飛ばすために長めに焼くことが重要なポイントです。
さらにその生地にバターを塗ったり砂糖をまぶして、香ばしさをプラスしていくと本格的なパリパリ系のクレープが出来上がります。
パリパリ系のクレープは非常に人気があり、キッチンカーのクレープメニューとして販売したいという方もいらっしゃると思いますがここでひとつ注意していただきたい点があります。
それは焼き時間が長く、大量販売には向かないメニューだということです。
キッチンカーでのクレープ販売は調理スペースが限られています。
そこに設置した1台のクレープ焼き機が、パリパリクレープ1個を焼くために長時間占領されてしまうのは大きなデメリットになります。
ですからパリパリ生地のクレープはイベントなどでは販売せず、平日のお客さんの少ない日の特別メニューとして取り入れるなど状況に合わせた工夫が必要だと思いますので覚えておきましょう。
もちもち系クレープ生地の焼き方
逆にモチモチ系のクレープ生地に焼き上げるポイントは、長時間焼かないということです。
もちろん生地の配合をもちっとした仕上がりになるよう考えることは重要ですが、いくらレシピにこだわっても、焼き時間が長くなると水分が飛んで固い仕上がりになってしまうので注意しましょう。
煙が出ない程度の高めの温度でさっと火を通すことでもっちり仕上がるだけでなく、焼き上げスピードが速くなるので大量販売にもつながります。
クレープで売上アップを目指す方には、もちもち系のクレープ生地がおおすすめです。
クレープ生地の味や色を変える方法

次に、クレープ生地の色や味を変える方法についても触れておきたいと思います。
ベースになるクレープ生地に少し加えるだけで味や色は簡単に変えることができます。
使われる素材はチョコレートや抹茶、粉末コーヒー、人工着色料などです。
例えば生地100ccあたり抹茶〇gと決めておき、注文が入った時だけ生地100ccに抹茶を混ぜて焼くという方法であればクレープメニューのバリエーションも一気に広がるのでおすすめです。
よくあるクレープ生地の失敗と対処法

では最後に、トンボを使ったクレープ生地の焼き方としてよくある失敗と対処法について解説してこの記事を終えたいと思います。
この記事が皆さんのクレープや開業にとって少しでも参考になれば幸いです。
焼き色が付かず、生地全体が半透明
適切な温度で焼いたクレープ生地は、全体にうっすら焼き色が付きます。
パリパリクレープのように長時間焼いた生地は、さらにしっかりと焼き色が付くのが適切な火加減です。
逆に焼きあがった生地が半透明で、焼き色が付いていない生地は明らかな温度不足だと言えます。
このような生地を使ったクレープは食べた時に生地の粉臭さが出て、おいしいクレープとは言えません。
焼く時の温度がもう少し高くなるよう設定してみてください。
トンボを使っても全然生地が広がらない
初心者がトンボを使ってクレープ生地を焼く場合、生地がぜんぜん広がらずにお困りのパターンが非常に多いです。
トンボを置いた場所でただ回しているだけでは生地は大きくなりません。
外側に広げる意識をもってトンボを回すことが、上手く生地を広げるポイントになります。
トンボに生地がくっつく
トンボに生地がくっついたものを取り除かずにそのまま焼き続けていると、クレープ生地が破れる原因になります。
どんなクレープ生地を使っても多少はくっつきますが、あまりにも頻回に大量にくっつく場合は、レシピ自体を見直した方がよい場合もあるでしょう。
さらにトンボをまわすスピードがあまりにも遅い場合も、生地がくっつく原因のひとつになります。
このように、クレープの生地を上手に焼くためには生地の配合(レシピ)・火加減・トンボの回し方の3つがそろうことが重要です。
最初のうちは難しいと思いますが、クレープ屋でのアルバイトなど経験がなくても独学でも十分習得可能な技術です。
ここでお伝えしたポイントを踏まえて、地道に練習を重ねてください。